鉄筋コンクリート建物と鉄骨建物は同じようなものと思っている方もおられ
るかもしれませんが、2つは全く違う建物となります。
なぜこのようなお話をするかと言うと、お客様に構造に詳しくなって頂きた
いからではなく、いかに構造が違うかということを知って頂きたいからです。
構造が違えば対処法は全く違うものとなりますし、建材の特性によっても
大きく変わってきます。
外壁塗装で失敗しないために、お伝えさせて頂きたいと思います。
そもそも両方とも非木造建物ではありますが、基本的にまったく違う建物です。
鉄筋コンクリート | 鉄骨造 | |
---|---|---|
材料・構造 | 鉄筋とコンクリート(砂、セメント、砂利を水で混ぜ合わせたもの)からできている。10mm~28mmの細い鉄筋を網目状に組んだ中にコンクリートを流し込んで作る建物。 | 梁、柱の構造材そのものが鉄骨のみで出来ている建物。木造の構造に近く、木造の骨組みが鉄であるイメージ。 |
接合部 | 鋼接合:柔軟性を持たず、開口部のまわりなど、地震でひびが入りやすい | ピン接合:柔軟性があり、地震に強い |
特性 |
・鉄筋は引っ張る力に優れており、コンクリートは圧縮力に強い材料なので、互いの特性を生かし建物が成型されている。 ・鉄筋は壁の真ん中に入っているイメージだが、実際には外側に入っており、ひびから鉄筋に簡単に水が到達する。このような構造を理解していることはメンテナンスの上で重要である。 |
・鉄骨は木造と同じようにしなる分、地震に強いが壁のひび割れなどの損傷は大きい。タイルの補修なども必要。 ・鉄骨の壁はモルタルやALCなどの外壁材で、年代によって構造が違う。モルタルは昭和40年~50年前半に建てられた古い建物で、ひびが入りやすい。 |
鉄骨造、鉄筋コンクリート造の建物はとても頑丈に作られているのですが、
実は建てた年代により建築基準法により定められている建物強度に違いがあります。
またその年代により、同じ部材でもその強度や使い方にも違いがあり、その違いに
より数年後の 外装リフォームの方法が多少違ってきますので注意が必要です。
建物強度については建物の耐震強度と言い換えても良いかもしれません。
年代による耐震基準の大きな違いとして、昭和56年に基準が見直され、
それ以前が旧耐震、それ以降は新耐震ということになります。
それ以降の建物の方が、同じ年月を経過しているのであれば状態が良く、建物を造る技術、使用素材も
良くなっております。それ以前の建物では昭和46年に基準が変わり、それ以前の建物強度はさらに劣ります。
外装リフォームを行う際、以前に建てられた建物だからといって、
これまでと同じ仕様に戻す外装リフォーム工事をすることはありません。
建物自体の強度以前に建物に関する防水性能に関することもそうですが、
現在の技術をうまく使いながら外装の仕上げ材料や納まりを考える必要があります。
建物の基本的な強度は変える事はできませんが、建物が建てられた年代に応じて
あらわれる傷みの症状に合わせた改修工事をすることと、近年の優れた材料や工法で
施工することで、今までより耐久性が強く、住みやすい建物にすることができます。
鉄骨・鉄筋コンクリート構造の建物自体の耐久年数は50~60年と言われておりますが、
その耐久年数を長くするのも短くするのも定期的なメンテナンスの対応次第になりますのでご注意ください。
ALCとは、鉄骨造の外壁材として近年多く使われる建材のことで、
ALC=軽量気泡コンクリート のことです。
製造メーカーによってはヘーベルと呼ばれ、ハウスメーカーでも多く使われています。
この建材は幅600mm×厚さ100mm×長さ30mm程度の板状に成型された建材で、
特徴として、多孔性・軽量・無機質で工業化製品としてJISの規格を取得しています。
工場生産で品質が安定しており、軽量で施工性も良く、昭和50年代頃から多くの
建物で使われています。
①ALC建材の1番のメリットとしては、やはり「軽量」ということでしょう。
何故軽いことがそんなにメリットになるのでしょうか?
それは、
軽量 = 施工性アップ = 工期の短縮 = コストが低い
建物の工事コストが削減できることで、売りやすく、買いやすい建物を造ることが出来るからです。
②2つ目は「断熱性」になります。
ALC建材は多孔性の為内部に空気の気泡があり、その空気気泡が断熱効果を高めております。
空気層の断熱効果が高いことは現在の建築建材の常識となっており、
例えばペアガラスや発泡スチロールなども内部にある空気層により断熱性能を高めています。
その為、夏は涼しく、冬は暖かい建物になるのです。
③3つ目はやはり何と言っても「品質」ではないでしょうか。
建物は現場作業で作られるのでどうしてもその品質管理に重点をおきますが、
それなりの熟練した技術が必要となります。
その為工場生産で部材を組み立てる、プレハブ工法も多く存在しますが、
ハウスメーカーなどが規格として作る住宅にとどまり、もう少し規模のある中規模建物には不向きです。
ALC壁建材はJIS規格により品質が安定しオーダープランの建物にも適応できることなります。
建材の特徴などは各製造メーカーから情報が出されているので、デメリット情報は意外にも知られていないのです。
しかし、建物を見て来た私としてはその情報もしっかりとお伝えしたいと思います。
①1つ目は、ALC建材は水に弱いことです。
本来コンクリートは耐水性建材と言われており水分を通しにくいのが特徴ですが、
ALCは特徴として気泡が多くある建材になります。
②2つ目は、強度が弱い(一般的なコンクリートと比較すると)ことです。
ここで前置きをしておかなければならないのが、一般的なコンクリートと比較すると、ということなので、
一般的な建材と比較してではありませんので誤解がないようお願いします。
一般的な建材と比較では無く普通のコンクリートと比較するのは、
仕上げに使う材料が鉄筋コンクリート建物に使われるものと同じ物を使用するからです。
強度が弱いことにより、耐震性にも影響が出てしまいます。
③3つ目は、建物全体に継ぎ目が多くなることです。
ALC建材は幅600mm×厚さ100mm×長さ30mmですので、パネルの継ぎ目がとても多くなります。
これにより以下のような問題が出てきます。
・継ぎ目が老朽化するとその防水性が低下し雨漏りの原因となる
・その継ぎ目シーリングの寿命が他の部分より短い
・メンテナンス工事ではその目地処理が全て必要となりコストが高くなる
④4つ目は、タイル貼りの下地としては適していないことです。
耐水性が弱いならタイルを貼ることで耐水性が向上するという考えもありますが、
ここでは経年によりメンテナンスをする時期に起こる現象から考えております。
ではその弱点を防ぐ方法はないのでしょうか?
ALC建物を所有している皆様には心配するようなことばかりお話ししましたが、ご安心下さい。
○耐水性能は仕上げ材の種類にもよりますが、ALC壁面に適した防水性能の高い材料があります。
○表面付着力と伸縮性がALC建材に適しているシーリング材料があります。
○高耐久&防水性の良いシーリング材を使用することで長期間の防水性能が保てます。
○外装メンテナンスと同時にタイル浮調査と貼り替え、目地補強をすることができます。
ただし、このような処理も決して特殊なことではありませんが、
正しいALC建材に関する知識と工事の経験がある工事会社に依頼することをお勧めします。
経験や知識が無いと、ちょっとした箇所の判断ミスが建物に影響を与えてしまうこともあるので注意が必要です。
私たちはご説明させて頂いたような構造や年代、建材の違いを
しっかりと理解し、より長持ちする、より快適にお過ごし頂ける
住まいをご提供できるよう努めております。
自分の家が何を使っているのかよく分からない、という場合でも
私たちが明確にした上で施工しますので、ご安心下さい。